着物職人さんのご紹介

着物のできるまで

京友禅の着物はたくさんの職人さんの手を経て出来上がります。
図案の構成→仮絵羽縫い→下絵→糸目、糊置き→引き染め→蒸し、水元→友禅→蒸し、水元→湯のし→金彩→刺繍→仕立て
ゴム糸目の着物はこの工程をたどって行きます。糊糸目の着物は順序が変わりますが仕事の内容は同じです。それぞれの工程の職人さんが力をあわせて出来上がるのです。
『京友禅公庄工房』で助けていただいている職人さんをご紹介します。

『下絵』伝統工芸士 廣野さん

廣野さん

下絵は京友禅の着物にとって基本となるものです。
あらゆる草花のスケッチを積み重ね、そのものを見なくても模様に描けるようにします。
また、光琳をはじめ多くの先人の絵を覚え、模様の中に生かしてゆきます。
着物の模様の構成もいろいろなパターンを考え注文に答えなくてはなりません。
これ等をマスターするためには、師に付いて長年の修行が必要です。
伝統工芸士の廣野さんはスケッチが趣味のような方です。
南丹市のホームページの中で『思 い出のなかから・悠久の故郷』と題して、心の中にある昭和十年代から三十年代までの故郷の生活や子供たちの遊びを絵にして画文集を掲載されています。
南丹市のホームページ、廣野文男さんのページをご覧下さい。

『糸目、糊置き』伝統工芸士 仁保さん

糸目置きは下絵をなぞってゴム、または糊を筒の中から搾り出して置いてゆきます。
ただ下絵をなぞるだけではなく、線の強弱をつけたり、下絵の崩れを修正したりしながら生地に押し付けるように置いてゆきます。
ゴム、または糊の糸目が生地にぴったり押し付けて置いてあると、この後取り掛かる友禅が非常にやりやすいのです。

『引き染』八木さん

八木さんはボカシ染めには定評のある方です。吹き寄せ模様に道長ふうの山ボカシをされていました。
真剣なまなざしが印象的です。このようにすっきりとボカシ、なおかつ合口を合わせてゆくのはなかなか難しいものです。この着物を着てくださる方の立ち姿を思い描きながら進められます。

『しごき染め』型染伝統工芸士 渡辺さん

振袖、訪問着などの染め直しは渡辺さんにお願いします。
しごき染めは、やわらかくむっくりとした仕上がりになります。
また、ヨゴレがきついときには吹雪染めもお願いします。
吹雪染めは難を隠して分からなくするのには最適です。研究熱心な渡辺さんです。

『手描き京友禅』 公庄武雄

京友禅は現在後継者を育てることがなかなか出来ません。
着物離れが進み業界の不振は目を覆うばかりになっています。
そんななか何とか生活を安定させ後継者を育てて『公庄工房』を譲り渡してゆきたいと思っています。
友禅のよしあしが着物のすべてです。振袖、色留袖、黒留袖には他の着物と違い格調が必要です。
如何に品良く鮮やかに、重厚に、配色や各色の混ぜ具合で表してゆきます。
また好まれる着物の調子は毎年少しずつ変わってきます。
それにも敏感に対応してゆかなければなりません。
長年やってきましたがまだまだ満足行くものは出来ません。

『金彩工芸』 伝統工芸士

『金彩工芸』 伝統工芸士 田中さん

金彩と京刺繍は京友禅の特徴を最もよく現す伝統技術です。
金彩と刺繍は京友禅の着物にとって最後のお化粧です。
女性にも自分にとって一番良く似合う、お化粧の仕方があるようにそれぞれの着物にも一番ふさわしい金彩があります。
長年の経験によって着物を見ればその着物の金彩方法が即座に浮かんできます。
金彩を加えることでその着物のグレードが一段と上がります。
金彩をお願いしている田中さんは伝統工芸功労で瑞宝単光章を受賞された伝統工芸士の方です。
後を継がれる息子さん御夫婦と仕事に励んでおられます。

模様伏せ

この作業は染め直すとき模様に染め直す色が入らなくするための作業です。
反物に透き通る青いシートを貼り付け模様に添って寸分たがわずに切り抜いてゆきます。
少しでも狂えば染め直した地色と模様の間にそめなおす前の色が出てしまいます。
非常に細やかな心配りが必要な作業です。
切り抜いた模様の上に伏せ糊を(付きたてのお餅のようなもの)ヘラを使ってかぶせます。
糊が生乾きの状態で青いシートを取り外しますと模様の上を糊で伏せた状態になります。
のりが乾けば染め直しをはじめます。

『色補正、シミ汚れ落とし』 一級技能士 大西さん

一級技能士の大西さんには染色補正やシミ汚れ落とし、カビ落しをお願いしています。
この写真はシミ、ヨゴレ落しの作業中です。
揮発を汚れたところにつけて棕櫚を束にした刷毛でこすります。
何回か繰り返し落してゆきます。

『仕立て』 中西さん

仕立て職人の中西さんは、仕立てあがった着物の写真撮影が終わると、たたむのがへたくそな私を笑いながらたたみなおしてくださいます。
いつもすみません、有難うございます。

掲載させていただいてる例は全て公庄工房での実際の例になります。写真の掲載のご協力をお願い致します。